
「洋服で言えば、シルクのワンピース」──
そんなふうに例えられる小紋(こもん)は、模様が一面に繰り返される型染めのきもの。その見た目はシンプルに見えて、実はとても奥深い存在です。帯や小物の合わせ方次第で、日常のおしゃれにも、ちょっとしたよそゆきにも自在に変化。年齢やライフスタイルに寄り添いながら、装う楽しみを再発見させてくれる一枚です。
型染めが織りなす、無限の世界──小紋のバリエーション

小紋は、繰り返される模様が特徴の型染めのきもの。
縞、絣、幾何学、水玉など、そのバリエーションは実に多彩です。なかでも、柄の密度や染めの技法によっていくつかの“個性”に分かれます。

たとえば、江戸小紋は一見無地のようにも見えるほど繊細な模様が全面に施され、遠目には控えめ、近くで見ると「粋」が光る大人の洒落着。対して、京小紋は友禅の技術を活かした華やかで女性らしい色柄が特徴で、晴れやかな場所にも映える一枚。さらに、絵画のような繊細な筆致で模様を描く加賀小紋や、模様が点在する飛び柄小紋など、選ぶ楽しさは尽きません。
コーディネート次第で「格」が変わる──小紋は変幻自在

小紋の魅力のひとつは、帯や小物によって印象が大きく変わること。たとえば、気軽なお出かけにはカジュアルな半幅帯を合わせて軽やかに。少し改まった食事会や観劇なら、染めの名古屋帯で品よくまとめて。さらに江戸小紋のように落ち着いたトーンの一枚に格調ある袋帯を合わせれば、格式ある場にもふさわしい装いに昇華します。つまり、同じ小紋でも、帯次第でカジュアルにもセミフォーマルにも対応できる“着まわしのきく”きものなのです。
TPOを考える時間も、小紋の楽しさの一部

「この小紋に合う帯はどれだろう?」
「お花見に着て行くなら、どんな色合わせにしようか?」
そんなふうに、着ていく場所や季節、気分に合わせてコーディネートを考える時間も小紋の醍醐味。特に縞模様や幾何学、水玉など季節を問わないデザインの小紋なら、春・秋・冬とスリーシーズン着まわせます。帯や羽織、小物を変えることで、同じ一枚でも毎回違う表情を楽しめるのです。母娘で帯を交換して楽しむのも素敵ですね。世代を越えて愛されるきものの楽しさが、そこにあります。
「気負わず、でも品よく」──大人の小紋スタイルを始めてみませんか?

小紋は、年齢を重ねた今だからこそ似合う装いです。派手すぎず、地味すぎず、帯合わせで“らしさ”を表現できるからこそ、大人の魅力を引き立てます。
お茶のお稽古や観劇、ランチ会、趣味の集まり──
ちょっとした「特別」に寄り添ってくれる一枚。
それが小紋です。
着こなすほどに「きもの上手」と言われる小紋、あなたのきものライフの中心に加えてみてはいかがでしょうか。