川端康成の『雪国』の舞台になった豪雪地区、新潟県南魚沼市に三代に渡って越後上布や本塩沢を織る林宗平工房さんがあります。
東日本伝統工芸展にて受寅歴を持つ林宗平工房三代目、林秀和氏
雪国だからこそ生まれた宝物
『トンネルを抜けるとそこは雪国だった』…
小説『雪国』の舞台にもなった南魚沼市は一年のうち約半年が雪に閉ざされる町。田畑に出られない長い冬の間、大切な家族のために浩心地良く、親子三代着られる丈夫なきものをつくる機織りが始まり、雪国という風土と家族を思う愛情から生まれた織物とも言われます。本塩沢のルーツとなる絣の技術が生まれたのは800 年頃、やがて苧麻を原料とした麻織物、越後上布と西陣御召など絹織物の技術も取り入れながら生まれたのが『本塩沢』です。
そんな歴史ある場所で伝統工芸を継承し塩沢の名門と言われるのが林宗平工房さん。親子三代に渡り、越後上布や本塩沢の伝統技術を
継承されてきました。三代目の林秀和氏もモダンな色やデザインで、心躍らせる作品を創作されています。
『塩沢紬』と『本塩沢』の違いは?
ところで塩沢と言われるきものには『塩沢紬』と『本塩沢』がありますが、それぞれ特長をご存じでしょうか?
『塩沢紬』は真綿から紡いだ糸で織っているので空気をたくさん含んであたたかく、袷の着物に向糸を使い、一方の『本塩沢』は、繭から直接繰り出だした生ヨコ糸に通常の約3 倍、2000 回以上の撚りをかけた強撚糸(きょうねんし)を使って織ることで“シボ”と呼ばれる独特な風合いを生み出します。このシボのデコボコによって肌に触れる面が少なくなり、サラリとした風合いが単衣のきものに最適と言われています。しかも、単衣には裏地がつかないので、親子三代着られるほど丈夫に織られています。
着るたびに着心地の良さを実感
本塩沢は細い色糸を何色も使ったストライプ模様をはじめ、一見は無地系のきものが多く、流行や年齢に囚われないシンプルな色柄が特長です。袋帯を合わせればお茶会などのセミフォーマルな席にも合いますし、帯や小物のコーディネートで街着としても楽しめます。
本塩沢特有のシボによって伸び縮みするストレッチ性もあり立ったり座ったりの動作も楽、シワにもなりにくく通年着られる方もいます。