【喪服・黒紋付】黒紋付が必要なワケ
前回、紋の由来や五つ紋に秘められた想いについてお話しさせていただきました。
家紋はとても奥が深く、お伝えしきれていないことがたくさんあるので、今回も紋とさらに黒紋付(くろもんつき)についてご紹介してまいります。
前回のブログはこちらから→【紋】五つ紋に秘めたる想い
喪服と黒紋付(くろもんつき)とは
喪服とは、葬儀や法事の際に着用しますよね。
ここでの喪服は、和装(一般的な黒の着物に黒の帯)のお話しとさせていただきます。
五つ紋の入った黒喪服は、弔事における最も格式の高い礼装です。
通夜・告別式では、一般的に遺族といわれる家族・親族(2親等程度)が紋の入った黒喪服を着用することが多いようです。
喪服には、悲しみの気持ちを表すと同時に、故人への敬意を表す意味が込められています。
追悼の気持ちをきちんと表し、失礼のないようその場にふさわしい装いをする必要があります。
では、「黒紋付(くろもんつき)」という着物を聞いたことがあるでしょうか。
黒紋付とは、その名の通り、黒地に五つ紋を付けた無地の着物のことです。
帯や小物を変えることによって、冠婚葬祭それぞれに着ることの出来る格調の高い着物です。
最近では、「黒紋付=喪服」と思われがちですが、合わせる帯や小物が黒であった場合に初めて喪服になるのです。
黒紋付は礼節を表す正礼装であることから葬儀で着用されることが多くなりました。
実際にお琴などのお稽古事の大会では、黒紋付に銀地の帯や紫の袴を合わせて舞台衣装として用いるそうですよ!
また、宝〇音楽学校でも黒紋付に緑の袴を合わせていらっしゃいますよね♪
ぜひ「黒紋付」というワードを覚えておきましょう♪
お母様世代の3分の2の方が黒紋付をお持ちです!
以前はご葬儀の際、故人に近しいご遺族の女性は和装の黒紋付を着用しているのが当たり前でした。
昔に比べると、黒紋付の女性をお葬式で見かけることは少なくなってきたでしょうか。
「最近は着ないよね~」というお声も聞こえてきたり、こなかったり…
しかし、黒紋付についてお母様世代に尋ねると、「結婚のときに持ってきました。」とおっしゃる方が多いのです。
実にお母様の3分の2の方が黒紋付をお持ちとのこと。
お嫁入り道具として準備しておくことは、嫁ぎ先のお家、親族の方への敬意となり、嫁がれてから黒紋付を買い求めることは避けられた方が良いとされていました。
「嫁ぎ先で娘が肩身の狭い思いをしないように」「嫁ぎ先のどなたかを不快にさせることがないように」・・・そうした親心からも、「娘が結婚するにあたっては、喪服だけでも用意しておいてあげたい」と考える方も多かったのかもしれません。
また、日本の伝統文化の中に、成人する子どもに家の紋を授ける「紋の継承式」があり、娘に家の紋を授ける事は一人前の女性として良縁と自立を願う親心として、黒紋付を誂え家紋の継承の証とされていました。
地域によっては、19歳の厄除けに黒紋付を作る風習もあるそうです。
黒紋付は「お守り」
黒紋付には五つの紋が付いています。
それぞれに意味があるのですが、詳しい意味は前回のブログをご覧くださいませ。
地方によって様々ですが、お嫁入りのお道具としてご用意される黒紋付は、嫁ぎ先の紋ではなくご実家の紋を入れます。
ご先祖様やご両親を表す五つ紋は、嫁いでからも「お守り」として、お嬢さまを悪いことから守ってくれるというものです。
つまり、黒紋付は、家族の愛に包まれた着物であり、守られている証でもあるのです。
黒紋付はいつ作るのが良い?
「家族や祖父母がお元気なうちに誂(あつら)える」
黒紋付は明日、明後日で着なくてはいけないケースがあります。
持っていないと間に合わないですよね。
また、病人が出てからでは、いかにも亡くなるのを待っているようで、準備はしにくいものです。
そのため、黒紋付は、ご家族みなさまが健康な時に前もってお作りになる方がほとんどです。
「良縁が早く訪れる」
昔はお嫁入り道具の必需品として、欠かせないものだったのでこのような言い伝えが出来ました。
特に女性に家の紋を与え、黒紋付を誂えることは一人前の大人の女性として自覚させると共に、お嬢様の良縁を願う親心であり、世間に対してのアピールでもあったのです。
「お彼岸に誂(あつら)える」
お彼岸はご先祖様と向き合う良い機会です。
この時期に誂えると、親族・身内の不幸が避けられると言われております。
かつては成人式が終わったら黒紋付をご用意されるのが通例でした。
その想いは今も変わりません。
まとめ
黒紋付についてご紹介させていただきましたが、いかがでしたか?
一定の年齢になってくると、肉親や配偶者など、悲しみの場に直面することも出てきます。
大切な方のお葬式に黒紋付を着ることで、故人への想いの深さが無言のうちに伝わります。
そして、弔問にいらっしゃって下さった方への礼を尽くす意味があります。
また、ご先祖様が故人の道案内をしてくれるとか…
ですので、紋の多いお葬式ほど、故人は寂しくないそうですよ!
着物のレンタルが増えている近年ではありますが、お祝い事で着る着物に比べて、比較的、喪服はレンタルを避けられる傾向にあります。
ハレの日に身につける着物は、”めでたいこと”のために使われたものですが、喪服はどなたか分からない方の不幸の場で使われたものということから好まれず、レンタルは避けられる方もいらっしゃるようです。
こうした忌避感は、人によって異なる部分もあるかもしれません。
価値観も多様化し、人それぞれの考え方や状況がありますので、それぞれの方のご事情に合った選択でも良いかと思います。
ただ、古来から伝わる五つ紋の意味や想いを伝える方が少なくなってきている時代だからこそ、改めて、黒紋付について知っていただくということも大切かと思い書かせていただきました。
こうした想いや文化をご理解いただき、改めて、黒紋付をお召しになるという選択をしていただけたら、嬉しく思います。
私自身、実家の紋をつけた黒紋付を両親に作ってもらいました。
そして数年前、母が他界し黒紋付を着てお別れをいたしました。
近年、あらゆることが簡略化されてきている時代ですが、大切なものは伝承していきたいと、私自身はそう強く願っています。
あまのやでは、家族の愛に満ち溢れた大切な着物「黒紋付」をお取り扱いしております。
一年を通していつでもお召しいただけるよう、冬用も夏用もご用意しております。必ずしも冬用、夏用2着をお持ちいただく必要はありませんし、お祖母様やお母様の喪服のお直しや「紋の染め替え」などのご相談も承っております。
黒紋付に関して、気になることがございましたら、お気軽にご相談くださいませ。
ただいま、混雑を避け、安心してご来店いただくために、ご来店のご予約をオススメしております。
▶ ☎:0285‐22‐0062
一人でも多く着物ファンが増えることを祈って…
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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